綺麗な詩


綺麗な詩
 

言葉を並べて、体を動かし、必死に列車の窓越しに訴えるあの瞳が
心に焼き付いたまま離れずに、今も目の前に見えた
憧れの都会から夕刻にかけて逃げ出した
あの日とおんなじ潮の香る海まで半日を
無駄に費やした、とタワーの上から、人の口から、声が責める
特にあなたがどうなっても、と冷ややかにすれ違い様に手を伸べられた
どうして涙が溢るるのか、どうして草木の隙間を進んでいるのか
立入禁止のロープが朽ちた場所から崖の上まで、もう少しで海が見えてくるはず
いつか還るところが。

恥ずかしくない生き方が記されている書物など、どこを探しても見つかるはずがなくて
言葉にたくさんを賭けても、水の泡となり、空しさ
何もかもを信じきって、果てしない笑顔をこの顔も昔見せていたとは、思い出したくもない
綺麗な言葉で朽ちる精神を修飾することも人間の証
どうして涙が枯れゆくのか、どうして崖に座り眺めた先には
あの時の瞳が映っているのか、安らかに荒ぶる波たちが呼んでいる
今が死ぬときだ。

太平洋という美しい造語では、私たちは生きていくことが出来ないんだ、とかつて詩人は思いを馳せて果てた、と
神話はまだ語り継がれゆく

いつまでもどうして涙で霞んでゆくのか、どうして同じ地殻の上に生きるのに、
都会の香りもあなたの美しい瞳も、立ち込める満ち潮だけが真実として代わり

この世からこの体が還り始めたら、一心に美しい詩でこの海を満たそう
あなたに届かなくても。

風が吹きつける
波が圧しつぶす


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綺麗な詩